黒が全てを引き込む

何色にも染まらない黒が全てを




黒があたしを惹き込む

何色にも染まらない黒があたしを

















「な、なぁ…?」
「…もう、少しだけ…」
「あわわわ…」

その距離15センチ。
じっと見つめて目を離さないに、エドワードは顔を真っ赤にさせている。

エドワードが報告書を提出しに来た所、ロイが今忙しいという事で応接室にて待たされているのだが。
なのに何故こんな状況になっているのか…
隣に居るアルフォンスも、ただ慌てるだけだった。

まだこの状態が続くのかと、困り果てた時。

「すまんな、鋼の。仕事が立て…込ん…」
「あぁ!遅いぞ大佐!」

ようやく現れたロイの方へ、ぐるりと顔を向けたエドワードだったが、
にがっしりと両頬を挟まれ、再び先程の状態へ戻された。

「ぅおっ!」
「もうちょっと!」
「鋼の!私のに何を!」
「オレじゃねぇっつーの!コレ見りゃわかるだろ!」
「大佐〜…がここに来るなり、兄さんの顔をじっと見つめて離さないんですよ…」
「なっ…」

早足に2人の方へ歩いてきたロイは、2人を引き離そうとした。
だが。

「うん、ありがとエド!」

そう言ってエドワードを解放するなり、はロイの横をすり抜けて応接室を去っていった。
するべき事を失ったロイの両腕は、所在なさげに空中に浮いたまま。

「な、何だったんだ…」
「ハッ…ちょっと待ちなさい!!」

慌ただしく部屋を出たロイに、エドワードは未だ熱を持っている頬をさする、

「何が何だかわかんねーけど、せめて報告書を持ってってくれりゃ良かったのに…」
「一体どうしたんだろうねぇ、…」

そうすればこれ以上この事件に関与せず、すぐに帰れたものを…


















応接室を出た時、既にの姿は見えなかった。
やや早足に歩きながら考える。
この長い廊下、姿が見えないという事はすぐに曲がったという事で、
その曲がった先で彼女の行きそうな所を考えれば場所はすぐにわかる。
幸い、この長い廊下は2〜3本右に曲がるしか道がなく、
一番手前を曲がった先で彼女が行きそうな場所と言えば。

「司令部か…」
「大佐ー!報告書ー!」

その声に後ろを見ると、応接室から鋼のが顔を出して封筒をひらひらさせている。
あぁ面倒くさい…そんな物よりが先だ。

「悪いが司令部に来てもらおう」
「はぁ!?」

それだけ言って私は走り出した。



















司令部に着くなり目に飛び込んできたのは、
後ずさりの体勢で固まっているハボックと、そのハボックの顔を覗き込むの姿。
周りも状況が掴めていないらしく、2人を凝視したまま固まっていた。

私は、私の登場に気付いていないの後ろに回り込み、
がっしりとお腹の辺りに腕を回して持ち上げた。

「わぁっ!」
「来なさい」
「もう少し!いや、もうちょっとだけだから!」

問答無用でを小脇に抱え、私の執務室へ向かう。
司令部を出た所で会った鋼のに司令室で待つように言う。

の叫びをかき消すようにドアを閉めると、
(からしてみれば)非情にも鍵の落ちる音が部屋に響き渡った。










小脇に抱えていた状態から解放し、今は2人立って私が真正面からを抱き込んでいた。

「それで、君は何をしていたのかな?」

ににっこりと微笑みながら問い掛ける。
そっと彼女の耳元に唇を寄せた。

「私という男がありながら」
「っあ…、ちょっ…耳元で喋らないで!」

逃れようと身を捩る彼女を難なく抱き上げてソファーへと移動する。
広いソファーの真ん中に座らせ、覆い被さるように彼女の頭の両脇に手を置いた。

「もう一度聞こう。『君は何をしていたのかな?』」

至近距離の私から逃げようと、は頬を染めながら顔をそらした。









「っ…だって―――金色とか青色とか、綺麗だなぁとか羨ましいなぁ…って」
「…瞳の色の事か?」

こくりとが頷く。
この国では珍しい物では無い筈だが、恐らく――

「ここに来るまで、ああいう色の瞳を見る事が殆ど無くて、だから…ついまじまじと…」

やはり。まあその件については許そう。

だが、金色や青色、それらの瞳を羨ましがるに少し悲しくなった。
彼女も私も黒。
同じ黒なのに。
私はそれが嬉しいのに。

「で…でも!
 ロイはあたしと同じ色。同じだから……嬉しいの。


 ロイの黒が一番好き」







心の中にじわりと広がる温かさ。

同じ想い。
欲しい言葉。

彼女の言葉ひとつひとつが染み込んでいく。








「私もだよ。


 君の黒が―――大好きだ」






彼女は微笑んだ。


まるで花が開くように。






そして私はその花に、そっと口付けを贈った。










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2005.11.20
そのままの君がいい


エドやハボックへの理由説明はまだまだ延ばされそうです。