あなたは私に言いました
帰って来れないかもしれない、と
私はあなたに言いました
可能性の話はやめて、と
イシュヴァールの内乱が始まって、もう何年も経ちました。
終わりの見えない戦い。
その戦いに、軍は国家錬金術師を投入することを決めたそうです。
私はそれを、自身が国家錬金術師である彼から聞かされる事となりました。
耳を塞ぎたくなるあなたの言葉。
大好きなあなたの声で、私の心は締め付けられるように痛みました。
帰って来れないかもしれない。
そんな言葉は聞きたくありませんでした。
可能性の話はやめて。
そう言うのが精一杯でした。
一番辛いのは、周囲の人間の誰でもない、その人自身。
言葉で救われるほど、その状況は優しくありませんでした。
何も言う事ができなくなった私の目から、冷たくも熱いものが零れていきます。
私を抱きしめようと伸ばされた腕から逃れ、私は再びあなたに言いました。
「お願い。
何年経ってでも良いから…
また私を抱きしめて下さい」
それが戦場へ赴く彼への最後の言葉です。
戦場への汽車に乗り込みを待つあなたを見送る時も、私とあなたは一言も発しませんでした。
泣きながら別れと再会を叫ぶ沢山の声の中、周りから見ればそれは不可思議な光景にも見えたでしょう。
私達はお互いの目を見ていました。
時間になり、列車に乗り込もうと私に背を向けたあなたに私は願いました。
振り返らないで。
だけど、きっと抱きしめて、と。
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2006.06.17
それだけで充分だから
今回は文体を変えてみました。