イーストシティステーションに着くなり、は駆け出した。
一刻も早くあの人の元に。
この世で一番大切なあの人の元に。



















東方司令部に駆け込む。
門番の人とは顔馴染みだったので、すぐに通してくれた。
次は受付。

「あら、ちゃん。久しぶりね。そのトランク…旅行でも行ってきたの?」
「あ、はい。まあそんな所です」

受付の人に曖昧な返事を返しつつ、まずは用件を伝えようと口を開いたが、
声の出る前に受付の人がにっこり笑った。

「ええ、わかってるわ。行って安心させてあげなさい」
「…え?」
「ここ1週間、マスタング大佐の様子がおかしいのよ。
 どうも落ち着かないっていうか…ホークアイ中尉の銃声が多かったわね。
 ねぇねぇ、マスタング大佐と付き合ってるんでしょう?」

どうやらロイとは事務室のお姉様方の噂のネタになっているらしい。
何も言えずに赤くなっているの反応をみた彼女は小さく悲鳴を上げた。

「羨ましい〜。あたしもあんな彼氏を絶対ゲットしてやるんだから!」











盛り上がる受付を離れ、廊下を早足で進みながらも、
さっきの受付の人が言った最後の言葉がの頭から離れない。
『様子がおかしい』『落ち着かない』
電話で突然「修行に出ます。1週間帰りません」なんて言った所為だろう。


さっきの彼女が言った通り、は早く安心させてあげたいという思いでいっぱいだった。



こんこん




「誰だ」

もの凄く不機嫌なロイの声が扉の向こうから返ってきた事に苦笑いして、自分の名前を名乗る。

です」

名乗ったのに、入れも何も返事がない。
そう思った瞬間扉が勢いよく開き、中から伸びてきた手に引っ張られ、
の体は執務室の中へ引き込まれた。
驚いて目を瞠ったの視界に飛び込んできたのは青。
ごとりとトランクが手から落ちた。


ああ、帰ってきたんだ。


「おかえり」
「ただいま」

ロイの腕に少し力が籠もった。

「心配したぞ」
「うん、ごめんなさい」

腕の力が緩んで、お互いの顔が見える位置まで離れる。
ロイの顔がゆっくりと近付いてくるのに会わせて、は瞳を閉じた。

何度も啄むような口付けを繰り返していく内、それは段々と深くなっていく。
まるで1週間の2人の間を埋めるように…

「んぅ…ふ…っ、ロ…ィっ」

唇が離れると、すぐさまロイはの服の前を少しだけはだけさせた。
首から鎖骨辺りまでの白い肌が露わになる。

「ちょっ…」


抗議の間もなく、ロイはの首筋へ唇を落とし、きつく吸い上げた。

ちくりとした痛みが走る。


「っ…!?」
「今日はこれで我慢するとしようか。もう勝手に出掛けないように」

「ば、ばか…もう勝手に行かないよ」

自身、この歳なのだから何をされたか位はわかっている。
ロイは名残惜しそうにから離れ、自分のデスクの方へ向かっていた。
は服装を整え、デスクの前に置かれた椅子に掛ける。

「まずは職務を全うしようか」

にっこりと微笑む自分の恋人に、いつも全うしてくれと思ったが、敢えて言わないでおく。
ロイは引き出しから大きめの封筒を取りだした。
四角い箱も一緒に。

「まだ封筒は開けていない。しかし、この箱があるという事は…合格」
「良かった…」

ロイが封筒から数枚の書類を取り出し、軽く目を通した。
そしてそれらをに渡す。

  大総統キング・ブラッドレイの名において
  汝、に銘 "朧"を授ける…

「朧…」
「国家錬金術師に与えられる二つ名。の銘は"朧"…朧の錬金術師だ」

そう言って銀時計を渡される。
自分の二つ名が"朧"。
一瞬何故だろうかとは首を傾げたが、思い当たる節を見つけ、納得した。

「あ…だからか」
「そこ、1人で納得しない。この恋人に教えてはくれないのかな?」
「あはっ。良いよ、教えてあげる」

イズミ師匠からもらったネックレスを使う初めてのチャンス。
は両手を、水を掬うような形にすると、石は淡い青を発光した。
それと差もなく、の両手の上でも連動してうっすらと光が現れ、
その後程なくして水が生まれた。

「なるほど…」
「綺麗でしょ?」
「ああ、確かにこれは"朧"が相応しい」

流石国家錬金術師のロイだけに、ヒューズのように質問はなかった。
水を消して立ち上がり、ロイを見据えた。
そして敬礼。

「これからは、国家錬金術師としてマスタング大佐の下で働きます」
「離すつもりは無いぞ」

ロイがにやりと笑う。

「離されるつもりもありません」

もにっこりと笑い返す。








ずっと、君の傍に





ずっと、あなたの傍で













後書

これで「泪月」は最終回です・・・とは言っても第1章が、と言う事で。
第2章はタイトルを変えてのスタートになるかもしれません。
これからについては、軍部で働くちゃんを書きたいと思ってます。
あと原作に沿った続きも書きたいですね(悩み所豊富ですが;)
この話の感想を沢山の人から頂けて、とても嬉しかったです。
お付き合い下さって本当にありがとうございました。
そして「泪月」を基盤とした第2章を宜しくお願いいたします。

ミハル 拝



追伸・・・;
ちゃんがブレダ少尉を車で駅まで送ったシーンありましたが、
後で鋼世界に免許証持って来てないという事に気が付いた!(苦笑)
い、一応軍の許可貰ったということで・・・あはは、無免許運転・・・(汗)