この1週間で、あたしは体術の基本をマスターした。
しかもどういうワケか、体操選手のように側転やらバク宙やらetc...が出来る程身体能力が格段に上がった。
きっと元の世界ではどう足掻いてもこんな事は出来なかっただろう。
あとはこの基本をどう組み合わせ、どう応用するか。
確かに師匠の修行は厳しくて辛い物だったけれど、
これだけ出来るようになったのは、女子供関係無く容赦のない修行をしてくれた師匠のお陰。
イズミ師匠、シグさん、メイスンさんが駅のホームまでわざわざ見送りに来てくれた。
「師匠…本当にありがとうございました」
「うん、この1週間で教えらる事は全部教えた。
なら、あとは自分で訓練していけば大丈夫」
「はいっ!シグさんもメイスンさんも、本当にお世話になりました」
「またいつでも来い。たまには元気な顔を見せろ」
「頑張ってな!」
「ありがとうございます!」
イズミ師匠の元での1週間。たった1週間なのに、みんなは家族のように接してくれた。
嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。
「師匠…あたし、師匠がお母さんみたいに感じて、すっごく…っ、嬉しくて…ひっく」
「ばか…泣くんじゃない。 絶対負けるんじゃないよ。
でも、本当に辛くなって、耐えられなくなったら…またおいで」
そう言って、師匠は抱き締めてくれた。
ピリリリリリリリリリリリ
「もう時間だね」
あたしはぺこりと3人にお辞儀をして、汽車の入口へ向かった。
乗り込んでからまた3人に向き合うと、師匠はポケットから何かを取りだし、それをあたしに投げた。
「わわっ」
手には20センチ程の細長い箱。
訳が分からず戸惑っていると…
「席に着いたら開けなさい。あたしからのプレゼントだよ」
「えっ」
汽車はゆっくり動き出した。
「あ、師匠…ありがとう!」
3人の姿はどんどん小さくなり、やがて見えなくなった。
駅を抜け、広がる町並みを車窓の外に見ながら、席に着く。
人影もまばらで、車両の中は汽車の音だけが響いていた。
「師匠からの…」
箱を開けると、入っていたのは直径1センチも無い球体の青い石と小さなプレートの付いたネックレス。
それと手紙が1枚、綺麗にたたまれて入っていた。
へ
昨日の夜、錬成の時に使う錬成陣はどんなものか聞いただろう?
それを石の中に入れておいたから錬成する時にそれがあれば
錬成陣を描く必要もないから素早い対応が出来ると思う。
お節介と思われるかもしれない。喜んでくれるかどうかも不安だ。
でも、の助けにと思って作ったという事はわかって欲しい。
1週間過ごしている内に、の事が自分の子供のように思えて仕方なかった。
国家錬金術師は嫌いだが、の事は大好きだよ。
イズミ
「イズミ師匠っ…」
ネックレスも手紙の内容も、全部が嬉しくて、手紙がくしゃっと音をたてるのも構わず抱き締めた。
後で慌てて皺を伸ばす事になるのだけれど…
この青い石の表面は硬いが、中は液体になっているらしく、
錬成陣を象った薄い小さな金属が浮かべてある。
教えた錬成陣は記号やら文字やら細かな物だったのに、それらをしっかりと再現してあった。
隣についている小さなプレートを見ると、
師匠をはじめエドやアルも持っているフラメルの十字架が刻まれていた。
師匠から弟子へ。
弟子が師匠になり、またその弟子へ。
そんな風に脈々と受け継がれるもの。
ぐっと涙を堪えながら、あたしはそのネックレスを着けた。
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またひとつ強くなりました。