庭で本を読んでいたら、いきなり後ろから布で口を覆われた。
すぐに意識が朦朧として、そこから記憶が無い。
東方司令部に無事帰って来たあたし。
まず、ロイの執務室で家で何があったのかを説明した。
そしたらロイは、自分の仕事中はこの東方司令部内で過ごせと言った。
「でも、家事とかしないと…」
「家事なんていい…心配なんだっ」
「それじゃあ等価交換にはならな」
最後まで言えなかった。
ロイがあたしの事抱きしめたから。
「お願いだ…」
あたし、反論できないよ…
抱きしめられてるから顔は見えなかったけど、
声とか
その抱きしめる腕とか
震えてた。
リザは今回の事件の報告書を作成していた。
しかし、ふいにその手を止めると、小さく呟いた。
「に薬を使われたのは、ある意味良かったのかもしれない」
その言葉に、周りはリザへ視線を向けた。
「…そう、ですね…」
「薬を使ったのは許せねぇ…でもそのお陰での受けた恐怖は最小限で済んだ」
体の傷は時間と共に治るが、心の傷は一生治ることはなく、抉られたまま。
忘れたと思っていても、ふとしたことでフラッシュバックする。
部屋を沈黙が包んだ。
その時。
こんこん
返答は無い。
不審に思ったあたしは、ドアをそろりと開けた。
「…? 失礼します」
中を覗くと、部屋は重たい雰囲気に包まれていて、いつものみんなじゃなかった。
あたしは、中に居た人達の視線が一気に自分に集中したのと、
いつもの雰囲気じゃないのに耐えられずドアを閉めてしまった。
「こらこら」
後ろに付いて来ていたロイが苦笑いしながらあたしの頭をこつりと叩いた。
「うぅ…だって…」
「私が先に入るよ」
そう言ってロイは悠々とドアを開け、一歩部屋に入った。
あたしも慌ててその後に続く。
「私の仕事中、には東方司令部で過ごしてもらう事にした」
ロイの発言にホークアイ中尉はやっぱり、という顔をしていたけど、
次の瞬間みんな笑顔になった。
「が居れば、大佐の仕事も大分捗るわね」
「あんな事の後だし、危ないですもんねー」
そこにはいつもの司令部のみんなが居て、安心した。
「?大佐もまだ仕事だし、そろそろ食堂でご飯食べない?」
外はもう真っ暗で、時計を見れば7時を指していた。
「ホントですか?じゃあ行こうかな」
そう答えたら、司令部のいつものメンバー全員が「俺も」「僕も」と言ったので全員で行くことになった。
ぞろぞろと廊下を食堂に向かって歩く。
「今回の事件は、ある意味良かったかもしれないって思います」
「…どうして?誘拐されたのに?」
「何て言うか…変な言い方ですけど、薬のお陰で怖い思いしないで済んだから」
「あー…まぁ確かにな」
みんなの表情が曇った事をあたしは知らない。
そんなあたしの脳裏に昔起きたある出来事が浮かんできた。
食堂の席に座った時、あたしはそれをみんなに話した。
「あたしさ、今どこの店でもそうなんだけど、
自分の後ろを人が通る度にすごく警戒しちゃうんだよね」
「何で?」
「昔痴漢に遭ってからそうなっちゃったんだ」
みんなが声を揃えて「痴漢!?」って言うから慌てて口に人差し指を当てた。
「何処で?」
「定番中の定番の駅。朝の混雑時に売店で本立ち読みしてたんだけど、
通り過ぎるフリして後ろからさり気なくお尻触ってくんですよ〜」
「「「「最低だ」」」」
「女の敵ね」
「だから、今でもそれを警戒しちゃうのに
この事件の事もっとハッキリ覚えてたらあたしどうなってたんだろう、って」
けらけらと笑いながら言うと、隣に座ってたホークアイ中尉があたしの事抱きしめてきた。
「中尉?」
問い掛けても何も答えない代わりに、中尉はあたしの頭を撫でた。
「は飯食うの遅ぇなー」
「う…」
お小言言ったハボック少尉のトレイはもう空。
お小言言われたあたしのトレイはまだ3分の1は残っている。
だって仕方ないんだよう…
「だ、だって…フォークとナイフは使い慣れてないから」
みんなは日常で使っているんだろうけど、日本人は箸メインですから。
と思いながらそう言った所、みんなが目を瞠った。
「え…何?」
「、今まで飯の時何使って食ってたんだ?」
「箸だけど」
「ハシ?」
ハボック少尉やブレダ少尉やフュリー曹長、ホークアイ中尉はわからないと言った顔。
でもファルマン准尉だけは違っていて、さながら歩く人間辞書の様な回答をくれた。
「[ハシ] 食べ物などをはさみとる、対になった二本の細い棒」
「ファルマン准尉、大正解です!」
その時、後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「私の居ない所で楽しそうだね」
「あ、ロイだ」
「大佐…ここに居ると言う事は、書類の方終わらせて頂けたんですね」
にっこりと(営業用の)笑顔で言うホークアイ中尉。
はっきりいって怖い。
だが、ちゃんと書類を終わらせたロイが狼狽えなければならない理由は無い。
「あ、当たり前だ。を食事に誘おうと思って私は頑張ったぞ!」
「それなら良いのですが」
「お疲れさま。…でも、ご飯みんなと食べちゃった」
そう言った途端、ロイは漫画でホークアイ中尉に「無能」と言われた時みたいに
床にぺたりと座り込んで項垂れた。
そんなロイに気付かれないようひっそり笑ってロイの前にしゃがむ。
「ごめん…また今度は駄目?」
「絶対だぞ?」
「うん、約束だね」
笑って言った。
ロイは立ち上がって、食事のトレイを取りに行った。
そして戻って来るとあたしの向かいに座り、食べ始める。
「はまだ食べている途中だろう?せめて、ね」
ちょっと照れくさいながら、自分も席に戻る。
ご飯食べるの遅くて良かった、って思った。
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この後、東方司令部に箸ブームが!?(笑)
ミハル「ちゃん箸ブームどうだった〜?」
「何か…子供に箸の持ち方覚えさせるみたいでした」
痴漢ってすごいむかつきますよね!
もう最低です。