閉じている目に光が当たる。
容赦ない光は、まだ眠たい体と頭を徐々にはっきりとさせた。
眠くて目が開かない。
でも朝ご飯を作らねば、と思って体を起こそうとした。
が。
動かない。
何事かと思って目を開けると、目の前には白いYシャツ。
「おはよう、」
頭の上から声が落ちてきたので見てみると、そこにはニッコリと笑顔のロイの顔があった。
「え?……あああぁっ!」
一瞬何でロイと寝てるのかわからなかったが、次の瞬間には昨夜の事が頭に浮かんできた。
雨で眠れなかったあたしが台所に来たら、ロイが一緒に寝よう、と言ってきたのだ。
しかもさっき動けなかったのはロイが抱きしめたままだったからである。
急に恥ずかしくなったあたしは、顔を真っ赤にさせながら、ロイから離れようと藻掻いた。
「はーなーしーてー」
「昨晩はあんなに擦り寄ってきたのに…」
「キャー!やだ!恥ずかしいから言わないで!」
「ははは。可愛いなあ、は」
ロイが腕の力を緩めると、あたしはロイの腕とベッドから抜け出した。
ドアの所まで小走りで来ると、未だベッドに残っているロイを見た。
「で、でもっ、一緒に居てくれて…ありがと。あと…おはよ」
そう言うと、ロイは一瞬驚いたような顔をした後、またニッコリ笑った。
「あぁ、おはよう」
窓からの日差しが眩しい。
東方司令部での1日の過ごし方。
ブラハと戯れたり、将軍とチェスをしたり、ロイから借りた本を読んだりするのだけど、
それでも結構暇で、今日もそんな1日になると思っていた。
「? 何か騒がしいなぁ」
中庭から見える廊下を、いつもの倍位の人が早足で行き交っている。
何か事件が起きたようだ。
その時、ちょうどロイとホークアイ中尉が並んで歩いて居るのが見えた。
中尉が書類を読み上げている。
「乗っ取られたのはニューオプティン発特急04840便。
東部過激派『青の団』による犯行です」
「声明は?」
もしかして、もしかしなくても、コレはまさかと思った。
ロイの錬金術が見れる。
そしてなにより、エドとアルに会えるのだ。
しかし、あたしは一つの難関に遭ってしまった。
ロイが現場に連れて行ってくれるとは思えない。
エドとアルは東方司令部に寄るから良いんだけど、
漫画と同じ事件でのロイの錬金術はなかなか見れる物ではないだろう。
どうにかして現場に行きたいと、あたしはうんうんと考えを巡らせた。
しかし、あたしが考え込んでいる間にロイ達は現場に行ってしまったらしく、
司令部は少し静かになっていた。
がっくりと項垂れていると、どこからか叫び声が聞こえてくる。
「あぁああー!」
「…ブレダ少尉?」
「あぁぁ、ちゃん…」
「ど、どうしたんですか?」
「それが…」
ブレダ少尉の話によれば、
自分も現場に行く筈なのに必要書類を探している内に置いて行かれたらしいのだった。
「あちゃー…それはマズいですね…」
「ど、どうしよう!大佐に燃やされる!」
燃やされる、って流石ロイの部下の発言。
ブレダ少尉は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「車は残ってないんですか?」
「残ってはいるんだけど…俺運転出来ねぇんだよな」
「あー、そうなんですか……あ!」
良いこと思いついた。
あたし閃いちゃったよ。
「じゃあ、あたし送りましょうか?」
「へ?ちゃん車運転出来るんだ?」
「ナビしてくれます?」
「も、勿論!」
ブレダ少尉を送る=現場に行ける=ロイの錬金術が見れる
あぁ、なんて完璧な作戦(?)。
車は流石軍という感じの車で、黒塗りでクラシカルな物だった。
運転は右ハンドルで左走行。
そんなに苦労しないで運転出来そうだったので安心した。
「じゃあ、行きますか」
「安全運転で…」
「当たり前です」
駅に着き、ブレダ少尉の後に付いていくと、
バルドがお縄を頂戴して連行されている所だった。
ロイとホークアイ中尉の姿も見え、その隣にはエドとアルの姿も!
あたしが目を輝かせた瞬間、ホームに悲鳴が上がった。
夢にまでみたこのシーンを実際に見れるなんて嬉しすぎてたまりません。
「大佐、お下がりくだ…」
「これでいい…」
ロイは銃を構えたホークアイ中尉を右手で制し、そのまま前へと伸ばすと、
こちらへ襲いかかって来るバルドに対し指を鳴らした。
発生した火花はまっすぐバルドへと向かい、赤い焔と爆音がバルドを包み込んだ。
「がああああぁっ」
バルドは地面に倒れ込み、それを憲兵が数人で取り押さえる。
ロイはその様子を見下ろすと、大佐らしく威厳を持って言い放った。
「手加減はしておいた。まだ逆らうというのなら、次はケシ炭にするが?」
「ど畜生め…。てめぇ何者だ!!」
「ロイ・マスタング。地位は大佐だ。
そしてもうひとつ、『焔の錬金術師』だ。覚えておきたまえ」
どうしよう。あたし、すごい感動してる。
ロイ格好良すぎるよ。
そう思っていたら、こちらを向いたホークアイ中尉と目があった。
「大佐…」
「何だね…って何で君がここに居るんだ!?」
「スゴイ!ロイ格好良かった!」
「そうだろう?…じゃなくて!」
「俺がお願いしたんです。送ってもらったんですよ」
「なっ、運転出来るなんて初耳だぞ!?」
「え?あぁ、あたしの国は車社会だから、大抵の人は免許取るんだよ」
「あぁ…君の運転する車に初めて乗ったのがブレダ少尉とは!」
「へ?」
あたしとロイが漫才のような言い争いをしていると、ホークアイ中尉が止めに入ってきた。
顔は至極笑顔で手には黒光りする物を持っていたが。
「「すみません…」」
ロイとあたしが両手を上げて降参すると、後ろから声が聞こえた。
「あの〜」
「ごほんっ。あーあー、オレ達の事忘れてねぇ?」
あ、忘れてた。
← →
今回でエドとアルをもっと出そうと思ってたのに!(涙)
もっと話も進む予定だったのに!(涙涙)