あたしは扉の前に居た。
どこかで見たことのある扉。








「あれ…あたし何して…」

『くっくっくっ。ようこそ』


声のした方を見ると、其処にいたのは体の輪郭のぼけた『誰か』がひとり座っていた。
あたしはこいつを知ってる気がする。


「あなたは…」


誰?と言う前にそいつは自分について話し始めた。


『おまえ達が"世界"と呼ぶ存在
 あるいは"宇宙"
 あるいは"神"
 あるいは"真理"
 あるいは"全"
 あるいは"一"
 そして…"おまえ"だ』

「あ…たし?」

『ははは。おまえは何も分かっていない。
 何故おまえはここにいるのか』

「え…何故、って…」

『簡単なことだ。おまえは人体錬成をした。』

「人体…錬成…―――っ!」





そうだ。

思い出した。

ここは…





セフィロトの門だ。




エドがここで…




「あ、あたしっ…」

『思い出したみたいだな。
 あの本に書かれていた錬成陣。あれは人体錬成の錬成陣だ』

「そんな!あたしは人体錬成なんてする気はなかったし、そもそも錬金術なんて使えない!」

『でも、錬成したのはおまえだ。
 錬金術の基本は原則「等価交換」。
 見せてやるよ、真理を』





背を向けていた扉はうっすら開き中から無数の黒くて小さな手があたしを捉える。
抵抗は皆無に等しく、あたしは扉の中へ引きずり込まれた。




頭が割れそうな位に大量の情報を頭に入れられた。
でも唐突に理解出来る。



それが真理だった。





『どうだった?』

「っ、これが…」


エドですら辿り着けなかった人体錬成の真理が、今、あたしの頭の中に入っている。
真理を見る為の通行料としてエドは左足を。




あれ?……じゃあ、これ程の真理を見たあたしの払った通行料は?






ぱきっ







その音は、あたしの体全体から発せられたもの。
ぼろぼろと崩れ、消えていくあたしの足、お腹、胸、手。
あたしの体が消えてゆくのとは反対に、曖昧だったあいつの輪郭は徐々に鮮明になっていく。


『くっくっくっ。ここに来る前にした人体錬成の代価だよ』

「やっ!やだっ!」

『なに嫌がってんだよ。等価交換だろ?』

「いやだ!死にたくない!」

『死にたくない?ははっ。また人体錬成でもするか?』

ただ生きたいって思った。
だから、そいつの吐いた嫌みはあたしに一つの希望を与えたのだった。

「くっ…やってやろうじゃない!」

ぱんっ

手を合わせ、さっき理解したばかりの人体錬成の真理を――思い描いく。
両の掌を自分に当てると、空気を裂く大きな音と共に分解は止まり、
みるみるうちに体は元通りに戻っていった。

「やった…!」

『バカだね、あなたは』

先程とは違う声…それは紛れもなくあたし自身の声で、
勢いよくそっちを見ると、そこにいるのはあたし自身だった。

「っ!?」

『ふふっ、等価交換でしょ?1回目の代価は体全て…ありがたく貰うね。
 あなたは今、2回目の人体錬成を犯した。それも何も無いところから。
 代価は何を貰おっかなぁ』

次第に霞かかったように『あたし』は見えなくなっていく。





そうだ。

これを奪ってあげるよ。

「人体錬成の真理」と「今までの日常」。

そして「苦しみ」をあげる。

その体に馴染むまで暫くかかるだろうけど、精々頑張れば?

くすくすくす








もう消えそうな程になった『あたし』は…あたしの顔で、嫌みったらしく微笑んでいたんだ。





 

大佐出てきてねぇー。

次回はちゃんと出ます。出します。