白い霧に覆われているここは

何も知らないあたしの頭の中













一面の白い霧。
とても細かな水蒸気の集まりは、ひんやりとあたしの手や頬に触れる。
夢だというのに、とてもリアルな感覚。

ふと前方に人影を感じたが、霧でよく見えない。
よく目を凝らすと、其処に立っていたのは『あたし』だった。
触れようと手を伸ばすと、『あたし』も同じように手を伸ばしてくる。
しかし、あと数ミリ、という所で『あたし』に触れる事は叶わなかった。

「鏡…」

その時、鏡の中の霧に『あたし』以外の人達がぼんやりと浮かび上がり、
それが誰かと認識した瞬間、あたしは叫んでいた。

「お母さんっ!お父さんっ!」

気付かない。
鏡を叩いても、必死に叫んでも気付いてくれない。
その間にも二人の姿は消えていく。

「いや…行かないでっ!気付いてよぉっ!お母さん…お父さんっ」

叫びも空しく二人の姿は完全に消えた。
鏡と向かい合わせに寄りかかったまま、ずるずると崩れ落ちる。


嗚咽だけがそこに響いていた。




















『もしもーし』





バッと顔を上げると、鏡の中の『あたし』があたしを見下ろしていた。
鏡ではない。
鏡ではないけれど、やはり2人の間にはガラスのような薄くて透明な境界面が存在していた。

「っ!?」
『やだ…そんなに驚かないでよ。あなたは知ってるでしょう?』
「知っ…てる?」

『あたし』はあたしと同じ目線になるようにしゃがんで言った。
表情は微笑んだまま、冷たい言葉を吐き捨てる。

『もう取り戻せない。そうなったのも、ぜーんぶ自分の所為。自業自得って事』
「何を…言っているの?」
『あれ?ホントにまだ気付いてないの?
 あぁ…もう死ぬんだっけ?うーん、だったら知らなくても良い事かもネ』

そう良いながら『あたし』は笑っていた。
自分は真実を知る為にここへ来た筈なのにまだ何もわかっていない。
ここに来ればわかる筈じゃなかったの?

『ここに来れば全部わかる筈なのに、って思ってるでしょ』

自分の心の内を読まれたかのように、相手の言葉は的を射ていた。
あたしはびくりと肩を揺らした。

『それは勘違い。夢はただのヒントに過ぎないんだから…
 ヒントを貰ったら、あとは自分で気付かないとね』
「っ…そんな事言われても、わからないんだからしょうがないじゃない!」

そう言い放つと、『あたし』は怒りに顔を歪ませた。
その視線は冷たくて、とても鋭い。



『わからない?しょうがない?
 あなたのやった事はね、そんな事で済まされないのよ!
 鋼の世界に来て結構経ったのに未だ何も知らないで生きて…
 幸せそうにして…ムカツクのよ!』

何も言えなかった。
一気に捲し立てられた為に反論する暇が無かったも事実だったけれど、
最も、『あたし』の言う事一つ一つがあたしの中の真実の重さを表していたから…
真実を忘れてしまっているあたしでも、それは感じる事が出来た。





『もう帰って…帰ってよ!』









それを合図にか、『あたし』も、周りの景色も、何もかも全てがフェードアウトしていった。














白い霧に覆われていたそこは

何も知らないあたしの頭の中だった










 

短い…夢だけで書いた方が良いかと思ったら短くなっちゃいました;
名前変換無くてすみませぬ〜。
キャストは、あたしと『あたし』ぽっち…ぎゃふん。

未だに思い出す事の出来ないちゃん。
そのうち知る事になると思います。
自分の中の真実を。