エドもアルも、ロイも。
みんな頑張ってる。






だからあたしも頑張るよ。


























汽車が見えなくなる。
は振っていた手を降ろし、そのまま足下にある荷物へと伸ばして持ち上げた。

「よし、じゃあ俺達も行くか…って荷物多くないか?1週間の滞在みたいな量だぞ」
「そ、そうですか?女の荷物はこんなもんですよ?服とか…色々?」
「へー…あ!そうだ!今日はウチに泊まってけよ!」
「良いんですか!?」
「全然良いって!エリシアに会ってやってくれ!つーか会え!」
「やったー!会います!」

セントラルには、帰還するヒューズと一緒に行く事になった。
滞在は今日から明日にかけて。
の手には大きめのトランクが1個、重たげに揺れていた。







!」

中央行きの汽車をホームで待っていると、後ろから声が掛かった。
聞き慣れた声。
でも、ここには仕事が忙しくて来れない筈だった人の声。

「ロイ!?」
「中尉から時間を貰うのには苦労したよ…」

そう言って苦笑いするロイ。
そんな姿を見ては戸惑った。
戸惑うと言っても、もちろん良い意味でなのだが。

「ど、どうしよう…来てくれるなんて、嬉しすぎる…」

は口元に手を当てて頬をほんのり染め、少し困った様な表情を見せた。
その瞬間ロイは荷物を持つの腕を引くと、その拍子にトランクが地面へと落ちて音を立てた。
それでもを引っ張るロイ。

「え、ロイ?」
「ヒューズ!そこでの荷物を見ていろ」
「オ、オイ!」

ロイとが人混みに消えると、ヒューズはやれやれと頭を掻いて苦笑いした。














さっきのホームとは違って人もまばらな場所。
ロイは他人から死角の場所を探し、の手を引いて行く。

「ね、どうし…んっ」

突然のキス。
あの時とは全然違う、深い口付け。
背中には壁、頭の両脇にはロイの手が付かれて逃げ場は無い。

長いキスに段々苦しくなってきたは、酸素を求めて結んでいた唇を無意識に薄く開いた。
そこを狙い、ロイは舌を使っての形の良い唇をこじ開けた。

「んぅっ…」

ロイは歯列をなぞり、奥に逃げていたの舌を上手に絡め取った。
それでも逃げようとするのをロイは許さず、丹念に愛撫する。

「ぁん…ふ・・」

強引なロイだったが、から突き飛ばしたり叩いたりという抵抗は無く、
ただロイに身を委ねるだけだった。

程なくして、甘く痺れるような感覚を残し、ロイの唇は離れた。
つ、と2人の間に銀の糸がひく。

「っはぁ…」

熱の籠もった吐息を零す
その濡れた唇に、ロイはまた口付けをしたのだが、それは先程とは違って優しい物だった。
最後にの唇をぺろりと舐めて離れていく。
力の抜けたはロイの胸に寄り掛かり、それをロイは受け止める。

「…こんな所で…」
「誰も見てないさ。その為にここを探したんだから」
「その為…って」
「明日まで会えないんだ。その分だよ」

にっこり笑って頬にキスをするロイにさっきの行為を思い出し、の頬が紅く染まった。
何も言えなくなったを見て満足したロイは、ポケットから出した銀時計を見る。

「そろそろ汽車が来る頃だな」





















「行ってきます」
「頑張ってこい」
「はいっ。ロイも、司令部のみんなを困らせない様にね」
「…善処するよ。ヒューズ、頼んだぞ」
「任せとけ」

蒸気を上げる音が先頭車両から聞こえ、続けざまに笛の音。
動き出す前に、とあたしは身を乗り出した。
その行為にロイが慌てる。

!危な…」

すぐに汽車がゆっくりと動き出した為に、一瞬触れ合った唇は自然と離れていく。
呆気にとられたロイに、少しはにかみながら微笑んで、それから手を振った。





汽車が見えなくなった頃、ロイは可愛い事をしてくれた可愛い恋人に向けて笑みを零した。
一回は出口へと足を向けたロイだったが、もう一度汽車の消えた方を見て、それから駅を後にした。





























朝一番でイーストシティを出発して、セントラルにはお昼頃到着。
長時間乗っていると、流石にお尻が痛い。

「ふー…やっと着いた〜」
「お疲れの所悪いんだが、すぐに中央司令部に行くぞ」
「はい」

やっぱりセントラルの方が、イーストシティよりも明らかに人が多い。
何とかヒューズ中佐に付いて、やっと出口に辿り着いた。
そこには軍人が1人迎えに来ていた。
そして、こちらに気付くなり敬礼をした。

「お疲れ様です、ヒューズ中佐!」
「おー、ごくろうさん」
「では、そちらの方が…」
「ああ、今日試験を受ける子だよ」
「そうですか。頑張って下さい」
「はい、ありがとうございます」

あたしとヒューズ中佐を乗せた車は、やがて大きな通りへと出て、その通りを真っ直ぐ進んだ。
真っ正面に大きな建物が見え、大総統紋章が大きく掲げられている。
中央司令部だ。


車を降りて建物を見上げると、いよいよという感じがした。

「うー…」
「どうした?」
「な、何かここに来たら緊張してきたみたい…」
「あー、そりゃあな〜」

ヒューズ中佐はカチコチのあたしの背中を、軽く叩いた。
ふっと肩が軽くなった気がした。

「あ…。中佐、ありがとう」
「おう、んじゃ行くか!」

廊下を進み、司令部の奥へと進んでいく。
奥へ奥へと進んでいくと、いつの間にか床に赤絨毯がひかれていたのに気が付いた。
ここで赤絨毯をひかれる程偉いといったら1人しかいない。
高い天井、広い部屋、入り口と正反対に置かれた机にその人は座っていた。




「先日は本当にありがとうございました、キング・ブラッドレイ大総統」
「いやいや構わんよ。元気そうで何よりだ。
 して今日の日程なのだが、これからすぐに筆記試験。その結果を見て精神鑑定と実技試験を行う」
「はい。よろしくお願いします」
「よろしい。では案内させよう。大尉!」

大総統は部屋の外に待機していたらしい軍人を呼ぶ。
すぐに部屋の中に入って来たこの人が案内してくれる事になっているようだ。
大総統にお辞儀をして、大尉の後に続く。
ヒューズ中佐がすれ違いざまに頷いたので、あたしも頷く事で返事を返した。














筆記試験、合格。
精神鑑定、問題無し。










 

緊張するとお腹が痛くなります。
胃酸過多・・・