自分は何故ここにいるのか。
書斎からここへ来るまでの間に何が起こったのか。
思い出せないの。
「落ち着いたかい?」
自分のやや上から声がかかってハッとした。
今の状態に気付いたあたしは、腕を突っ張って大佐から離れた。
「す、すみませんっ。いきなり泣いたりして」
「いや、良いんだよ。いきなり何も分からない所に来てしまったんだ。
不安になるのは仕方のない事だ」
そう言ってくれる大佐の言葉が嬉しくて、また涙が出そうになった。
それがバレないように顔を伏せる。
そうして伏せた視線の先に差し出されたのは、ひとつのカップ。
そのカップからは湯気と一緒にほろ苦い香りが漂っている。
「ごめんなさい、コーヒーで。ちょうど紅茶は切らしてて…」
「いえ…ありがとう、ございます」
中尉はソーサーにミルクと砂糖を付けてくれていたけど、どちらも入れなかった。
静かにひとくち。
やっぱり苦い。
苦笑い。
苦みは、自分を少し冷静にさせてくれた。
ハガレンを知っている事。
それは未来を知っている、という事になるのだろうか。
今、話は何処まで進んでいるかわからないけれど。
大佐達には伏せておこうと思う。
言ったら何が起こるかわからないから。
ふと鼻に感じる匂い。
これは良い匂いではなくて、寧ろ苦手な…
「…っ」
「どうしたんだい?」
「…煙草…」
「煙草?」
中尉はハッとしてドアを勢いよく開けると、そこにいたのは東方司令部の皆さん。
中尉は呆れ顔。大佐はこめかみに青筋が見える気がする。
「おまえ達…」
「す、すみませ…大佐」
ハボック少尉。ブレダ少尉。ファルマン准尉。フュリー曹長である。
4人はトーテムポールのように顔を縦に並べていた。
そして煙草の匂い。
原因はハボック少尉だったようで、未だに煙草を燻らせている。
あたしは、煙草を消してもらうべく、その煙と戦闘開始。
「けほっ。すみませ…煙草、こほっ、消して貰えませんか?」
「へ?」
大佐は「あぁ、そうだったのか」という顔をして、ハボック少尉を睨みつけた。
「早く消したまえ」
「え、あ、はい。すんません」
ハボック少尉はすぐに消してくれた。
「ごめんなさい」
「いや、こっちも悪かった。病人の部屋の前で煙草吸う方が悪いし」
「大佐…あたし病人扱いになってるんですか…」
「見つけた時は顔色が悪かったし、第一、意識も無かったからな」
その後、みんなが自己紹介してくれた。
やっぱりみんな漫画で読んで思っていた通り、気さくで良い人達だった。
「って事は、は他の世界から来たって事になんのか?」
「ん…そう言うことにな、ごほっ、げほっ」
「だ、大丈夫!?ちゃん!」
大丈夫。と答えようとした口の中に広がる味。
それは、鉄の…・
口元を押さえていた掌には赤色。
「え…血だ」
「うわぁぁっ。ち、ち、血ですっ」
「っ、おまえ大丈夫なのか!?」
「医者だ!医者を呼べ!」
周りは慌てている中、何故か自分の頭は冷静だった。
生まれて初めて血を吐いたのに、こんなに冷静でいられるのはおかしいって思う。
誰かが頭の中で「その位大丈夫だよね?」って笑って言うんだ。
あたしも、自分で「この位大丈夫」って思うんだ。
おかしいよね。
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ちゃんと東方司令部のみんなとの出会い編。
会って早々血を吐きました。
記憶が飛んでるのも、血を吐いたのも体が馴染んでない所為なんですけど、
頭の隅っこでは何か感じ取ってるみたいですね〜。