青い空

風に舞う葉っぱ

見上げればそんな情景











「ん〜…気持ち良いなぁ」

病室に缶詰にされていた体をのびのびとさせて、中庭の端っこにあったベンチに座って空を仰いだ。
少し遠くから子供の声がする。
この雰囲気を例えるならば、『のどか』が一番だろう。

「さてと。携帯携帯っ」

ポケットに入れていた携帯を取り出し、電源を入れる。
電子音の後、ディスプレイが表れる。
まず確認すべき事。

「あー、やっぱりダメか…」

電波はゼロ。圏外だった。
でも一か八か、電話かけてみることにした。
手慣れた操作で番号を呼び出し、通話ボタンを押す。



「うんともすんとも言わないし…」

「電波が届かない所に...」さえ聞こえなくて、聞こえるのは無音だけ。
自分が圏外じゃ当たり前だろう。
それに、ここはあたしの居た世界とは違う世界なんだから、センターなんてあるわけがない。

「はぁ…これじゃあ携帯の意味無いよ」

あたしはカメラを起動し、手を上に向けて写真を撮った。
撮った空は真っ青だった。











中庭を走り回る子供達。
軍の病院だからなのか、子供の数はそんなに多くは無い。
それぞれの子供にそれぞれの理由があって、ここに入院しているのだろう。
でもみんな楽しそうに走り、笑っている。
それを微笑ましく思いながら眺めていた。




ぼーっと見ていると、ひとりの女の子がこちらに向かって来る。
何だろうと思いよく見れば、ボールがこちらに向かって転がって来ていた。
あたしの近くまで来たボールを拾い、辿り着いた女の子に渡す。

「ありがとう、お姉ちゃん!」
「どういたしまして」

あたしに手を振って戻って行く女の子に笑顔で手を振り返す。

「かわいかった〜」
笑顔で手を振る仕草とか。小さい子は可愛いよ。

見送って自分もベンチに戻ろうと、ベンチを振り返る。
が、そこには…

「た…大佐!」
「や、

いつの間にか、さっきまで座っていたベンチに大佐が座って優雅に足を組んでいる。
顔には笑顔…怖いよ。

?いつまで立っているんだ?座らないのかい?」
「…す、座らせて頂きます」

座っている自分の隣を叩き、座るように促される。
やっぱり怒っているみたい。
沈黙がむちゃくちゃ痛いんですけど。



痛い沈黙がしばらく続いたが、それを破ったのは大佐だった。

「病室、抜け出したね」
「……はい」
だってヒマだったんですヨ。
「何処から抜け出したんだい?」
「………窓、デス」
だってドア以外っていったら窓しかなかったネ。

あなたどこの人よ、と言うのは置いておいて、きっと次はキツイお咎めの言葉だろう。
と思ったが、次に聞こえてきたのは予想と反したものだった。

「くっ…ははは」
「な、何でそこで笑うんですか!?」
「いや、窓とは思わなかったものでね。看護婦の目を盗んでちゃんとドアから出てきたものだと」
「だって看護婦さん結構厳しく見張ってるみたいだし、
 そんなスパイみたいな行動とれませんよ。第一コレありますし」

コレと言うのは、オトモダチの点滴カラカラくんの事だ。








大佐は抜け出した事怒ってないみたいで、ホント良かった。
それに病室に連れ戻そうともしなかった。

「そう言えば」
「へ?」

大佐がいきなり話すから変な返事を返してしまった。
一体何だろうか。

は私の事を大佐と呼ぶね」
「?はい」
「これからはロイと呼んでくれないか?それと敬語は止して欲しい」
「…………えぇぇぇぇぇっ!ななな何でですか!?」
「だって君は軍の人間ではないだろう?
 それに、私は既に君を名前で呼んでいるし。私がそうして欲しいんだ」
「まぁ、そうだけど」

ハガレンの中で大佐はかなり好きだった。
よくよく考えてみれば、そんな人が目の前に居て、助けてもらったり自分の名前を呼んでいる。
そんな状況を改めて認識させられた。

「呼んでくれないか?」

少し物悲しそうに目を伏せてそう言う大佐に逆らえそうもない。
だから頑張って勇気を出してみるが
でもクラスの男子さえ名字で呼んでいたあたしにとって、これはかなり恥ずかしい。
何とか敬語はなくせているけどね。

「ろ…ロイ…さん?」
「余計な物は要らないよ」
「う……ロイ」
「良くできました」
ロイ…まだ違和感というか…やっぱ恥ずかしい。

そう言ってロイはあたしの頭を撫でた。

「子供扱いはやめてよー」
「ははは」

あたしも童顔の為に前から子供扱いには慣れっこなのだけど、やはり複雑。
大体実年齢よりも数年は若く見られる事が多い。
もっと歳を取れば、若く見られた方が嬉しいのだろうが。

「どうせあたしは、童顔で可愛くないですよーだ」
「そんな事はない。は可愛いよ」




ロイがそう言う事をさらりと言うから、あたしの顔は多分真っ赤だよ。








- おまけ -

携帯のカメラを起動して、自分の顔を見てみた。
やっぱり真っ赤。
ロイのばかー!

「それは何だ?」
「え?携帯電話だけど」
「それが電話!?線は!?」
「無いから携帯電話って言うんだよ〜。
 でもこの世界じゃ使い物にならないんだよね…」
「仕組みはどうなっているんだ?」

質問責めだ。
この世界は電話には交換手が不可欠な時代なので、携帯は超ハイテク機械と言うことになるだろう。
質問責めでも仕方ない…かなぁ。






 

やっっとロイと呼ばせる事に成功。
次回はあのお方が出ると思います。