晴れていた空は
闇が迫るに連れて
灰色の雲に覆われた
『明日、君に会いたいと言う人が居る。だからちゃんと部屋に居てくれ』
帰り際、ロイはそう言った。
一体誰だろうか。
この世界であたしを知っているのは東方司令部のみんなだけなのに。
寝ようとしたら、カーテンの向こうからしとしとと雨の音が聞こえてきた。
昼間はあんなに晴れていたのに、天気はやっぱり気紛れだ。
あたしは明日には晴れてると良いな、と思いながら眠りについた。
忘 レ チ ャ ダ メ ダ ヨ
目の前に誰かが居る。
口から上が霞んで見えない。
声も聞こえないけど、辛うじてわかる口の動きがそう言っている。
忘れちゃだめって何を?あなた誰?
忘 レ ル コ ト ハ ユ ル サ レ ナ イ
一言区切って吐かれた単語。
そして目の前の誰かはにやりと笑い、両手をあたしの首に絡めた。
ぎり、という音がいやに生々しく、鮮明に聞こえ、呼吸する術を失い始めたあたしは苦しさに喘ぐ。
もう、だめだ。
「げほ、けほっ…ごほっ」
もうだめだと思った瞬間目が覚めた。
でも、首に残る感触と脳裏に焼き付いたあの弧を描いた口はあまりにもリアルで…
こんこん
「っ…はい」
「おはようさん。検温のじか…どうしたの!?」
部屋に入ってきたのは、担当の看護婦さん。
あたしを見るなり青い顔をして駆け寄ってきた。
「え?…何がですか?」
「何が、ってこの痣!」
痣?
首筋に軽く触れてみるが、触るだけじゃわからない。
看護婦さんが持ってきてくれた鏡で見てみたら、そこにはくっきりと指の跡。
まるで誰かに絞められたような跡だ。
背筋がぞわりとした。
すぐ先生が呼ばれて診てもらったけど、痣は痣。
内出血しているだけで大丈夫だと言われたが、問題はどうしてそうなったのかだ。
誰かが侵入した形跡はないし、自分でやったワケでもない。
ただ夢の中で首を絞められただけ。
痣の原因については謎に包まれたままになってしまった。
上半身を起こし、ベッドに凭れて空を見上げた。
雨は止んでいたけど雲は厚く垂れ込めたまま。
そんな中、部屋をノックする音が聞こえた。
「入るよ?」
「ロイ…」
「失礼するよ」
誰か一緒のようだ。
扉が開いて、そこにいた人。
―――――キング・ブラッドレイ大総統!
「えっ、あの…」
「あぁ、そのままで」
「、この方は軍の最高責任者キング・ブラッドレイ大総統。
君の事を報告したら会いたい、と」
な、名前知ってます…でもこの人とは予想してなかった。
この人も結構好きだけどね。
「これ、お見舞いのメロンなんだが」
「へ?あ、ありがとうございます」
エドと同じくメロン貰っちゃったよ!
「!?その包帯どうしたんだ!?」
ロイが手を伸ばす。
包帯とは今朝の一件で首に巻かれた包帯の事だ。
出来ればあまり思い出したくないけど、隠せるような事でもない。
「夢で首絞められた。目が覚めたら痣になってて…誰かが入ってきたって跡もないらしくて」
「そんな事が…」
「でもただの痣だから大丈夫だって」
「そう…か」
「、と言ったね。君は異世界から来たと聞いたのだが」
「はい…」
自分でもワケがわからずここに来た。
色々な事が頭を駆けめぐり、顔を俯かせる。
「この世界で生活するには色々と必要な物もあるだろう。まずは、戸籍だ」
あっ、と思った。
あたしはこの世界で存在するはずのない存在。
戸籍なんてあるわけがない。
「戸籍は私の方で何とかするから、心配することはない」
大総統はにこりと笑った。
「大総統…ありがとうございますっ」
「あとは住む所なんだが…」
「じゃあ、私の家に住まないか?」
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キング結構好き。渋い!
それにしてもチクショウ・・・ロイの出番が少ない!