「君が欲しい」
その言葉は嬉しくもあり
同時に怖くもあった
頭の片隅で、はこの言葉がいつか必ず訪れる事をわかっていた。
それなのに心が付いて来ていない。
はただロイを見上げるだけで、何も言えなかった。
「沈黙は肯定だ」
の着ている服の前を少しはだけさせると、白い肌と鎖骨が露わになった。
ロイはの首筋にそっと顔を埋めて一度強く吸い上げる。
「っ…」
が小さく声を上げた。
唇を落とした其処を見れば、紅い花が一輪小さく咲き、
そしてそのままロイは顔を下げ、服の合間から覗くの胸元へと唇を寄せた。
「…んぅっ…」
少しくぐもった声。
それに気付いたロイが顔を上げると、案の定は自分の指を噛み、
ロイから与えられる初めての感覚に耐えていた。
しかし、ただ1つロイが予想していなかったのは、彼女がその眼に沢山の涙を溜めていた事。
きゅっと眼を閉じるのと同時に、大粒の涙が零れ落ち、は嗚咽を漏らした。
「うっ、ひっく…」
止んだ愛撫に、は噛んでいた指を外して両手で顔を覆った。
溢れる涙を隠すように。
「ごめ、なさ…ごめん、なさいっ」
そう何度も何度も繰り返す。
ロイはハッとし、後ずさる様にベッドから降りて彼女との間に距離を取る。
未だ泣きじゃくるを置いて、ロイは部屋を飛び出した。
自分は何をした?
沈黙=肯定
そんな決まり無いだろう?
彼女が『良い』とも『嫌』とも言わなかった事を、
それを勝手に『良い』と取る事は、自分の欲望でしかない只のエゴイズムだ。
私はそれを彼女に押しつけて―――
「くそっ…!」
壁を思い切り殴りつける。
降り注ぐ水に服が濡れるのも構わない。
シャワーから流れ落ちる水滴の冷たさが、
壁にぶつけたままの手の痛みなんて言うものを消していく。
水は渦を作って排水溝へと流れて落ちていった。
嫌なわけじゃない。
そう言ってもらえて嬉しいと思うのに、それなのに自分は…
擦った目元が熱を持っている。
どの位そこで泣いていただろう。
時間の感覚が掴めないのは、きっとそれだけ長い時間だったのだと思う。
はだけた服を手で押さえてベッドから降りると、裸足の足からひんやりとした冷たさを感じた。
「ロイ…どこ?」
2階部屋を隅々まで見たけれど、彼は何処にも居なかった。
階段を降りていくと、薄暗い家の中に裸足の足音が小さく響き、この静けさに耳が痛んだ。
ふと、ある扉の前の床が濡れている事に気が付く。
「…水?」
幾つもの水溜まりが廊下に出来て、それは少し離れた扉まで続いてその扉の向こうへ消えていた。
水溜まりの上を歩き、水を空気に融かしていく。
ロイ
ごめんね?
きっとロイは自分の事を責めてるよね?
あの時貴方の呟いた疑問も
あたしの気持ちも
ちゃんと話すから
聞いてほしい
← →
はい、今回は未遂です。
このシーンは前々から描きたいシーンでもあったので、
期待していた方々には申し訳ありませんです…