赤が深まる
時が過ぎる
確実に
汽車から1歩降りた駅のホームはやはりそれなりに人が多く、
あたしはトランク片手に人混みの間をすり抜けて出口へ向かう。
もう少しで外という時、俯き気味だった視界に青がちらついた。
それは真っ直ぐこちらへ向かってくる。
「少佐ですか?」
「あ、はい」
あたしの正面に来たその男の人は、ぴっと敬礼をした。
「お迎えに上がりました、軍法会議所のフェリクスと申します。地位は少尉です」
どうやらヒューズ中佐がわざわざ寄越してくれたようで、何だか申し訳ない気がした。
外に待たせてあるらしい車に向かう途中、あたしはフェリクス少尉に問い掛けた。
「やっぱり護衛とかは付く事になっちゃいますか…?」
「はい。少佐殿には不快な思いをさせてしまうかもしれませんが、
やはりスカーがまだ捕まっていないので…」
「そんな、不快だなんて…自分に護衛なんて勿体ないな、って」
そう言って苦笑いすると、ふとフェリクス少尉が足を止めてしまった。
彼はあたしを見たまま目を瞬かせる。
何か変な事を言っただろうか。
「あの?」
「あ…申し訳ありません。何故そうお思いになるのです?」
「…只でさえ軍法会議所は忙しいのに、貴重な人材を私なんかに充てて良いのかと…」
フェリクス少尉が小さく微笑んだ。
「ヒューズ中佐の仰る通りの方ですね」
「え…?」
車に乗ってから何度問い掛けても、
彼は笑みを浮かべるだけでそれ以上の事を何も答えてはくれなかった。
「中佐、只今戻りました。少佐をお連れしましたよ」
「お久しぶりですヒューズ中佐」
「おー来たか。まあ座ってくれ。フェリクスもお疲れさんな」
勧められた来客用ソファーには腰を降ろした。
ヒューズも向かいに座る。
「セントラルまでわざわざ悪かったな、向こうも大変なんだろ?」
「まあそうなんですけどね。一応自分の仕事は3〜4日分程先まで終わらせてきました」
「おお…流石。仕事覚えるの早ぇなぁ」
出されたコーヒーを口へ持って行くと、湯気の先にどこか見た事のある女性が居る事に気が付く。
書類の柱と柱の間から見える彼女は眼鏡をかけいて、余程疲れているらしく顔色が悪い。
「中佐…あの人って」
「ん?ああ、一昨日入ったばっかのシェスカだ。
――――って、もしかして…『知っている』ってやつか?」
最後の方を小声にしたヒューズに、が苦笑して頷く。
ヒューズは「そうか」と一言呟いて頭を掻いた。
「まだ…『アレ』は解けてないんですよね?」
「ああ。もうかれこれ10日目らしいからな。
昨日言ってた書類2〜3枚やったら行ってみてくれないか?」
「はい、そうします」
渡された書類を見てみると、わざわざセントラルに来てやるような物ではなく、
期限などの無い、どれも郵送で事足りるような物ばかり。
しかし、そこをセントラル出張にしてくれたヒューズには心の中でお礼を言った。
ヒューズはエドワードとアルフォンスを思ってそうしてくれた。
勿論も2人の事はとても心配している。
しかしそれ以上に心配なあの事に対処出来る事が有り難い。
ヒューズがそれを知る術は無いけれど。
「シェスカさん」
「あ、はい!何でしょう!」
顔を上げたシェスカは大分やつれていた。
第一分館に保管されていた過去の事件の記録や名簿。
それらを全て復元出来るのは彼女だけなので、この状態は無理もない。
「初めまして。・と言います。
先日はエドとアルに、あの資料をありがとうございました」
「え…あ、いえ。私はただ覚えていた事を文字にしただけです」
「でも…シェスカさんのその力のお陰で、あの2人はまた前に進めたんです」
「何だかそう言われると照れますね…」
恥ずかしそうに笑ったシェスカにつられ、も笑みを零した。
少し、空が赤くなってきた。
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久しぶりの連載更新。
やっぱりこの辺はロイの出番少なくなっちゃうよね…
そしてフェリクス少尉は名前無いと不便だったので付けました;