そう、辿り着いたのね
『真実』という偽りに覆われた『真実』に
トゥルル ブッ
電話はワンコールもしない内に繋がった。
『こちら東方司令部です』
「セントラル出張中の少佐です。マスタング大佐に繋いで下さい」
『はい、しばらくお待ち下さい』
回線が繋がる間、の指は無意識に電話を軽く叩いていた。
こつり、こつりと数度鳴らした所で、朝別れたばかりなのにどこか懐かしい声が受話器から聞こえてきた。
『私だ。無事着いたか…』
微かに安堵の溜息が聞こえたような気がした。
「ん。受理まで多分1週間位かかると思う」
『そうか…』
「……終わったらすぐ帰るよ、ロイ…」
『ああ。待ってる』
そっと瞳を閉じたの脳裏に、受話器の向こうで優しく微笑むロイの顔が浮かんだ。
無事着いた旨と、出張の期間についての報告。
たったそれだけの会話。
しかし、時が過ぎるにつれて乱れつつあったの心は、少し落ち着きを取り戻した。
私服で司令部の中を歩くに、擦れ違う人々の視線が自然と向いてくる。
その所為か歩みも無意識に早まってしまい、元居た部屋へ逃げ込むように入った。
「中佐、あたしそろそろ行って来ますね」
「宜しく頼む。ああそうだ、こっち居る間はウチに泊まってかねぇか?」
「うーん…有り難いんですけど、今回は他に用事もあるので宿を取る事にします。
グレイシアさんとエリシアちゃんに宜しく言って下さい」
「そーか。まあ遊びに来てくれや。誕生パーティーもな」
「はい!勿論です!」
懐から取り出した妻子の写真を見ながら顔をへにゃりとさせるヒューズに苦笑いし、
は荷物を持って部屋を出ようとした。
「おっと、護衛付けないとな。フェリクス呼ぶからちょっと待ってろ」
「あ、中佐!その事なんですけど…護衛はいりません」
何を言うんだ、と言わんばかりの表情をするヒューズに、は小声で説明を付け加えた。
「スカーは暫く動けないと思います…だから何とか勘弁してもらえませんか?」
「…そりゃ本当か!?まあ、がそう言うんなら本当なんだろうが…」
スカーが暫く動けない事を知っているに、確かに護衛は必要ないのだが、
その事実を公にしても、今の段階では証拠不十分な事はヒューズもわかっている。
「自分で自分の身は守れますから…お願いします」
そう言うに、ヒューズは渋々頷いたのだった。
流石セントラルの国立中央図書館。
イーストシティの図書館もそれなりに大きいのだが、大きさは倍以上あるだろう。
そしてその西隣に位置する第一分館は、黒い瓦礫の山と化していた。
「ぅわ、酷い…」
風が吹く度に、元は蔵書だったのであろう物の残骸が巻き上がる。
その無惨な姿から目を逸らし、あたしは図書館にいるエドとアルの元へと向かった。
進む廊下の先に見覚えのある2人の姿を捉えた時、ちょうど5時を知らせるの鐘の音が聞こえてきた。
そして護衛2人の会話も。
「――っと…」
「今日で丸々10日…収穫無しのようね」
「すみません。エルリック兄弟はこちらですか?」
やはり護衛の2人。
あたしは空気が張りつめるのを感じ、ロス少尉がキリッとした表情であたしを見た。
「失礼ですが、あなたは…?」
「あたしは――
「ふっ……ざけんな!!」
エドの怒鳴るような大きな声。
何冊も本が落ち、椅子が倒れる音。
それらの突然の音に、ロス少尉とブロッシュ軍曹は守っていた部屋の扉を開け放った。
「なっ…何事ですか!?」
自分の立つこの廊下から、物の散乱した室内に立ち上がって俯くエドと、頭を抱えるアルの姿が見えた。
そのまま沈黙する2人にブロッシュ軍曹が駆け寄る。
尋常じゃない2人の様子に、あたしの存在はロス少尉とブロッシュ軍曹の頭から薄れたらしい。
「兄弟喧嘩ですか?まずは落ち着いて…」
「ちがいますよ」
「では、暗号が解けなくてイラついてでも…?」
「解けたんですよ…暗号、解いてしまったんです」
資料の内容を知らない者にとって、それは喜ぶべき事だ。
ブロッシュ軍曹もそれに漏れず喜びの声を上げた。
「本当ですか!?良かったじゃないですか!!」
「良い事あるか、畜生!!」
ドカッと床に座り込んだエドの手は強く握りしめられており、
右手で目を覆って歯を食いしばっている。
「『悪魔の研究』とはよく言ったもんだ…恨むぜマルコーさんよ……!」
「…一体何が?」
ようやく2人が辿り着いた。
「賢者の石の材料は…」
そう。
生きた人間なの。
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お久しぶりですエルリック兄弟。