信じなければ進めない


だから


そんな哀しいこと


言わないで


















二度、扉を叩く。
程なくして静かに扉は開き、エドワードが顔を覗かせた。

「…はよ」
「おはよう、エド」

昨晩は眠れなかったのだろう。
顔にも雰囲気にも疲労が表れている。
部屋の中へ入ると、アルフォンスがソファーの後ろに寄り掛かっていた。

「アルもおはよう」
「あ…。おはよ…」

部屋に1つしかないソファーにが座ると、エドワードは何か飲むかと問い掛けた。
しかしが軽く首を振ってそれを断ると、
一言「そうか」とエドは呟き、の隣に腰を降ろした。
エドワードが背もたれに頭を預け、目を閉じて一度深呼吸した。
ゆっくり息を吐いた後、再び目を開けて鋼の義手を天井へ伸ばす。






「なんかこう…手の届く所に来たなと思ったら、逃げられて。
 それのくり返しで。やっとの思いでつかんだら、今度はつかんだそいつに蹴落とされてさ…」

くっと握った拳が顔に影を落とすと同時に、エドワードが自嘲の笑みを浮かべる。

「はは…神サマは禁忌を犯した人間をとことん嫌うらしい。
 …オレ達、一生このま―――
「駄目」

その言葉だけは言ってほしくないとは思う。
突然の制止の声に、エドワードもアルフォンスも驚いてを見た。

「それ以上言ったら…駄目。
 自分の目的を疑ったら、見つかる物も見つからなくなるって思うんだ」
「っ、嫌でもそう思っちまうっての!はこの資料知ってたんだろ!?」
「ちょっ、兄さん…!」

捲し立てるエドワードに、は膝の上に乗せていた手を強く握りしめた。

「2人を前に進ませてくれる唯一の物でしょう!」

が顔を上げて2人を交互に見やると、強い眼差しが2人を貫いた。
エドワードとアルフォンスが見たの目には、
強さと相反するように涙がうっすらと浮かんでいる。

「それをあたしが否定したら…2人は前に進めなくなる。
 この資料は次へ繋がる大事な物だもの…」














「…悪ぃ。さっきのは只の八つ当たり…だな」
「ううん…あたしこそ怒鳴ったりしてごめん。2人の方が辛いのに…」

ふっとエドワードが力を抜く。
のお陰で、胸のもやもやした物が少しばかり晴れた気がしたのと同時に、
今まで弟に言えなかった事、聞けなかった事を言う勇気を貰った気がした。



「―――― なぁ、アル。
 オレさ…ずっとお前に言おうと思ってたけど、怖くて言えなかった事があるんだ…」
「何?」

「ちょっ…お待ち下さい!」
「2人とも休んでいるところですので……」


静かだった部屋に、廊下からドカドカという大きな音が入り込んでくる。

「!?」
「エルリック兄弟!!居るのであろう!?我輩だ!!ここを開けんか!!」

廊下を通る音もさることながら、扉を叩く音も声も豪快。
この豪快さは絶対にあの人だ。
間違いない。

多少近所迷惑になると分かっていても、エドワードが居留守を提案した。
アルフォンスとが「同意」の意を込めてガクガクと頭を縦に振る。
しかしその瞬間。


がきょ。ぼりん。


小気味の良い軽い音がしたと思ったのも束の間、
ドアノブだけを持ったアームストロング少佐が部屋へと入ってきた。




「聞いたぞエドワード・エルリック!!」




「あちゃー」と頭を抱えると、涙ぐんで声にならない叫びをあげる兄弟の前に、
大きな巨体が立ち塞がったのだった。














 

ほぼ原作のまんまだからなぁ…汗。
何かすいません;
「間違いない」は某芸人風にどうぞ(笑)