「はぁ…」

ガゥン!




窓の外を見ながら溜息を吐いたら、鉛弾を一発プレゼントされてしまった。
窓に映り込んだ私の後ろに、プレゼントをお見舞いしてくれた張本人がにっこりと微笑んでいる。

「ははは…中尉」
「いい加減にして下さい、大佐。」
「きゅ、休憩を…」

ガチャ

「っ!わ、わかったから!その銃を降ろしたまえ!」

やっと銃を降ろしてくれた彼女は、何処に持っていたのか新しい書類の束を出した。
しかもこの厚さときたら、人を殴れば致命傷を与えかねない。

「大佐。これでもまだ良い方なんですよ?
 が自分の分を3〜4日先までやってくれていたからこそ、この量で済んでいるんです」






がセントラルへ行ってから、もう2日が経とうとしている。
君がここにいる事に慣れてしまっていた所為か、
どんなに忙しく慌ただしく騒がしくても、司令部はどこか静かに感じられた。
それは皆、同じく感じているだろう。



「『デスクワークは出来る時にやる』、とは言っていましたよ、大佐?」

どこか黒い微笑みを浮かべて、最後は疑問系。
なあ中尉、その言い方は脅迫だろう。

「…善処するよ」















君は今、何をしているんだろうか。



































呼吸が苦しい。

夜の帳が降りきった街の中に唯一聞こえるのは、自分の足音と呼吸音。
2人の宿から殆ど全速力状態のまま約5分。ようやく闇に埋もれた目的の建物が見えてきた。
ラッキーな事に憲兵が居ない。

「え…あれ?――――居、ない?」

居ないという事は、1つの事を指していた。
固く閉ざされた門の横にある通用口から静かに中へと侵入し、聴覚に神経を集中させた。





「その人格も記憶も、兄貴の手によって人工的に造られた物だとしたら、どうする?」
「そっ…そんな事があってたまるか!!
 ボクは間違いなくアルフォンス・エルリックという人間だ!!」






はっとして、その声の方へ走り出す。





「"魂"なんて目に見えない不確かな物でどうやってそれを証明する!?
 兄貴も周りの人間も、皆しておめェをだましてるかもしれないんだぜ!?」











「そうだ!おめェという人間が確かに存在していた証は!?肉体は!?」
「…じゃああんたはどうなんだ!?」
「そこの者、動くな!!ここは立ち入り禁止になっている!!」

辿り着いたそこには、ナンバー66ことバリー、アル、そして先程までは門扉にいたのであろう憲兵。

「すみやかに退―――
「うるせェよ」

その言葉は続かず、バリーの大きな包丁が憲兵の頭の上半分をすっぱりと斬り飛ばしていた。

「『じゃああんたはどうなんだ』だと? 簡単な事だ!」

地面に崩れた死体の傷口から溢れた血が血溜まり作り、それをバリーは踏みつけた。
闇の中に紅が撥ねる。

「オレは人間の肉をぶった斬るのが大好きだ! 殺しが好きで好きでたまんねェ!!」

バリーが楽しそうにげらげらと笑って言葉を続ける。

「我殺す、故に我あり!!
 オレがオレである証明なんざ、それだけで充分さァ!!」








何の躊躇いもなく人を斬る。
何の躊躇いもなく命を切る。









軍人になった時、『死』に覚悟はしたつもりだった。





だけど。
だけど。










初めて見た『殺人』という『死』に、あたしの足は止まった。












 

同時刻の4人の視点を飛び回って、なかなか進みません…涙。