きらきら
きらきら
なないろにひかる
それはまるでしあわせのかたち
「はい、エリシアちゃん。改めてお誕生日おめでとう」
長方形で底の浅い小さな箱だけれど、それでもエリシアちゃんの手には少し大きい。
手に載せてあげると、目を輝かせてあたしを見た。
「ありがとうお姉ちゃん!開けても良いっ?」
「うん、良いよ」
エリシアちゃんは、その小さな手でいそいそとリボンを解き、蓋を開けた。
「ふわぁぁ…きれいー」
2cm程の大きさをした雫を象る石のネックレス。
その小さな石の中には幾つもの色が存在し、
それらの色達は互いに相反する事もなく入り混じって光を染めていた。
エリシアちゃんの目はそれに釘付けになっている。
「ど、どうかな…?」
「お姉ちゃん!付けて付けて!」
少し興奮気味な様子を見ると、気に入ってもらえたみたいだ。
付けてあげると、エリシアちゃんは石をつまんで光に透かして見た。
「パパに見せるー!」
そう言ってエリシアちゃんはあたしの手を取り、ヒューズ中佐の元へ走り出した。
ぱたぱたと軽快な音を立てながら辿り着いたヒューズ中佐に、
エリシアちゃんはネックレスを自慢げに見せた。
ウィンリィも一緒に覗き込む。
「凄い…。石の中に沢山の色が…流れてる。もしかして中は液体なの?」
「見たこと無い石だな。何て言う石なんだ?」
「オリジナルです」
「作ったのか!?」
こくりと頷く。
ヒントはイズミ師匠から貰ったネックレスだった。
原材料は水と、何色ものビーズ――つまり硝子である。
「何色ものビーズをまず1つに結合させてから、
まずはビーズ…つまり硝子を構成する原子同士の結合を所々切ってあげるんです。
でもそれだと物質は安定しないので
「…ちょっと難しい…」
「俺も同じく」
「うーん。つまりは、常温でも硝子を液体に保たせて、それを水で包んだんです。
その石の膜は氷みたいな固体で、中は通常の液体というワケです。
それに、その水は状態変化しないように細工してありますのでご安心を」
ヒューズ中佐とウィンリィは、思い切り省かれた説明に何とか頷く。
そんな難しい話の合間、エリシアちゃんはやっぱり石を透かして見ていた。
「あいつの整備士やってるって?」
「ええ。同じリゼンブールの生まれで、家も近かったっていうのもあって」
ウィンリィの膝の上で、エリシアちゃんがネズミのおもちゃをいじっている。
その様子をウィンリィは微笑ましく見やった。
「小さい頃からいつも一緒で、きょうだいみたいなものですよ」
「良いなー、幼馴染みかぁ」
「わはは。あんなだから手間かかるだろ」
ウィンリィが苦笑いを浮かべる。
「手間がかかるって言うか、心配ばっかり。
たまに帰って来たと思ったら、おもいっきり腕壊してるし」
今日も呼び出されてみれば、エドは大ケガで入院中。
アルは何かに悩んでいる。
半月前に新しいオートメイルを付けたばかりなのに、もう傷だらけ。
「おまけに身体も傷だらけで…いったいどんな生活してるんだろう。
だけど、何があったかなんてあいつら絶対言わないんですよ
元の身体に戻る旅に出る時も、あいつら1人で決めちゃって相談もされなかったし…」
すっとウィンリィが目を細めて視線を逸らした。
そして、一度結びかけた唇を開く。
「―――本当のきょうだいなら、旅に出る事も、今日のケガの事も、きちんと話してくれたのかな」
「ウィンリィ。それは…違うよ」
「ああ、そうだな」
「っ、でも…やヒューズさんやアームストロング少佐には話したり、相談したり…してる。
あたしってそんなに頼りないのかな…」
ウィンリィは俯いた。
自分には話さないのに、他の人には話す。
エドとアルから見て自分は何なのか、と。
そう思ってしまう。
「相談しなかったんじゃなくて、相談する必要がなかったんだろ」
どういう意味なのかわからず、ウィンリィは顔を上げる。
そこには優しく笑ったヒューズ中佐が居た。
「ウィンリィちゃんなら、言わなくてもわかってくれるって思ったんだよ。あいつらは」
「………言葉で示してくれなきゃわからない事もあります」
「…うん、それはあたしもわかるな。
でも、エドがあたしに話したって言うのと、
ウィンリィに話さないって言うのは、根本的に違うんだと思うよ。
頼りになるから話す、頼りにならないから話さない。
そうじゃないんだよ」
ヒューズ中佐は困ったように笑いながらメガネを拭いた。
「しょーがねぇよなぁ。男ってのは言葉よりも行動で示す生き物だから。
苦しい事は、なるべくなら自分以外の人に背負わせたくない。
心配もかけたくない。
だから言わない。
それでもあの兄弟が弱音を吐いたら、きっちり受け止めてやる。
それでいいんじゃないか?」
しん、と静かになったウィンリィとヒューズ中佐とあたしの間。
しかし、そんな空気も子供達の声で消えていく。
「エリシアちゃーん!あそぼ!」
「なんだよー。エリシアちゃんはボクとあそぶんだよー」
「えー、ボクとだよー」
無邪気な子供達に、自然と笑みが零れた。
「あはは、娘さんもてもてですね」
「将来はあの中の誰かと結婚しちゃったりして」
ぴくりと反応したヒューズ中佐がどこから出したのか、ジャコッと銃を構える。
親バカもここまで来ると、ある意味凄い。
「おい、小僧ども。うちの娘に手を出したらタダじゃおかねぇぞ!」
「ヒューズさんは行動で示しすぎ!!」「ヒューズ中佐は行動で示しすぎ!!」
ユニゾンしたあたしとウィンリィは、お互いに笑い合った。
やっぱりウィンリィとは気が合いそうだ。
人の少なくなってきたヒューズ家の居間で、あたしとウィンリィは向かい合って座っていた。
リザさんより歳の近い女の子と話す機会というのは、この世界に来てからはほぼ皆無。
やっぱり嬉しいものだ。
他愛もない話をしている内に、やっぱり話題はどんどんあっちへ向かっていく。
「は好きな人とか居る?」
「うん…居るよ」
「ねぇねぇ、どんな人?」
どんな人、か。
ふと、この世界に来てからのロイの姿が浮かぶ。
優しくて。
かっこよくて。
キザで。
無能で。
たまに意地悪で。
「……全てにおいてあたしを助けてくれた人、かな。
その人の支えになって、ずっと、傍に、居たい――っ」
「?」
涙が溢れて、零れて、落ちて。
そう。
ただ、ロイに笑っていてほしい。
その一心で。
あたしはここに在ったんだ。
苦しい事は、なるべくなら自分以外の人に背負わせたくない。
心配もかけたくない。
だから言わない。
この苦しみは、ロイもヒューズ中佐も、この世界の誰も知らなくて良い。
あたしだけで充分なんだ。
何が何でも守り抜く。
そして
かならず
あなたの元へ
帰ります
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お待たせしました。
更新が遅くなって本当に申し訳ありません;
セントラルに来てから、ちゃんを不安にさせすぎてしまったと思ってました;
再び決意を固める事が必要だったので、頑張ってパーティ内に組み込ませてみたり…