嗤った彼との間に流れた一瞬の静寂が


酷く耳に痛かった

















じり、と微かにエンヴィーの足が動いた瞬間、は強く握りしめた右手を、
胸の前で右から左へ素早く動かした。
そしてふっと拳を解き、そのまま数メートル先の彼を薙ぎ払うように再び右へ振り抜く。

その1秒にも満たない素早い動きを合図に現れた帯状の水が、勢いよくエンヴィーに襲いかかる。
それを体を少し反らせる事で軽く回避したエンヴィーは、口角を上げた。

「ふーん…―――さっきラストの爪を切り落としたのも、それに似たような錬成だったってワケか。
 水は使いようによっちゃ刃と化す…」

エンヴィーの前を横切った水は、さらさらと音を立てながらの元へ。
の手の動きに合わせて動くその水は、淡い光を帯び、まるで天の川のようにも見えた。

「…"朧"の二つ名そのまんま。


 久しぶりに楽しめそうだね」

きっ、とがエンヴィーを睨み付けると、エンヴィーはにこりと笑ってへと一直線に走り出した。

「でも時間が無いから――今日はちょっとだけ…」
「!?」

の数歩手前でジャンプしたエンヴィーは、空中で回転を加えてその遠心力で右の回し蹴りを繰り出した。

「だよ、っとォ!」

1歩退いてそれを避けたは、自分と、着地したばかりのエンヴィーとの間に素早く水を滑り込ませる。
エンヴィーが僅かにバランスを崩した一瞬、水を一時的に消し、
は相手の腹部に右・左と突きを入れて撹乱させた後、左から脇腹を思い切り蹴った。

「ッ!」

ざり、とエンヴィーは1メートル程動かされた所で踏みとどまる。

「へぇ。予想以上だ」
「悪いけど…こっちは本気なの」

パキン

 パキン
パキン

が3回指を鳴らした。
瞬時に変わった部屋の雰囲気に、エンヴィーがぐるりと辺りを見回す。
しかし、それはもう遅かった。

漂う冷気に彼が気付いた時、既に彼の両足は氷によってしっかりと床へと固定されていた。

「なッ!」
 ―――早い!

それを見届けたはすぐに扉の方へ走り出す。
去り際、一度振り返りエンヴィーを見た。

「中佐を殺させやしない…絶対に!」






離れていく足音を背中に受けながら、エンヴィー呆然と―――否、悠然と立っていた。
まるで、これはちょっとしたハンデだと言わんばかりに。



「ハッ…面白い!」






















何とかエンヴィーを足止めさせる事に成功したあたしは、中佐を探していた。
彼の傍に居れば、尚対処がしやすいと考えたからだ。
その為にも、まずはエンヴィーから離れる必要があった。

「あっ、中佐!」
!大丈夫だったか!?」

ヒューズ中佐は、傷を押さえながら廊下の向こうから小走りにこちらへ向かって来た。

「怪我はないですけど、一時的に…ホントに一時的ですが、足止めをしてきました。
 中佐こそ、肩の怪我が…」
「これくらいなんでもねぇ」

そう言って少し長く息を吐きながら、ヒューズ中佐は再び早足で歩き出した。
あたしもその後ろに付く。
静かな廊下に、早足な軍靴の音が鳴り響いた。

「これから外へ出る、外へ出て一般回線から東方司令部へ電話を掛ける」
「はい」
「詳しい事はその時に話す」
「…はい」



不意にヒューズ中佐が足を止めた。
何故足を止めるのか。
そう思い見上げると、ヒューズ中佐が少し悲しそうに笑っていた。

「悪かった…約束は破っちまったし巻き込んじまったな…」

あたしが中佐に巻き込まれたなんて、違う。
違うよ。

自分から向かっていったんだから。







だからあたしは首を横に振って否定する。
そして、不安を拭い去るようにあたしは笑った。







「急ごう、ヒューズ中佐」











 
旅行も挟んだので、本当に久しぶりの更新です。
本当に久しぶり過ぎてすみません…

とある漫画…と言うかアニメで戦闘シーンの研究をしてみました。
でもやっぱり映像→文章は難しいです。とほー。