私の傍に…



早く帰ってこい





















沈黙に包まれた病室にノックの音が響き渡った。
柄にもなく肩を揺らしてしまった私を見兼ねてか、中尉が返事を返してくれた。

「誰ですか?」
「軍法会議所のフェリクス少尉であります」

1人の男が静かに入って来た。
軍法会議所というと…

「君はヒューズの部下だったのか?」
「はい。それで…先程少佐発見現場の検証が終わりました。
 これがその写真になるのですが…」

差し出された数枚の写真を受け取る。
まだ言葉が続きそうなのだが、なかなか口を開こうとしないフェリクス少尉を見ると、
彼は何かに耐えるように唇を噛んだまま。

「…何か気になる事でも――」
「っ、申し訳ありませんでした!」
「何故君が謝るんだ」

深々と下げた彼の頭を上げさせる。

「自分は…少佐の護衛を任されました。
 しかし、少佐がこちらへ到着した当日、
 駅から軍法会議所までの送迎のみで護衛の任を解かれました」
「?」
少佐の護衛から外れろ、と…」
「何…?」
「自分がそれほど高い能力持っているわけではありません…
 しかし、こんな自分ですが無理矢理にでも護衛に付いていれば最悪こんな事態は免れ――」
「それはヒューズからの命令か!?」
「っ――…は、はい。ヒューズ中佐から任を命じられ、解かれました」
「次に他の誰が護衛に付いたか分かるか?」
「いえ、その後少佐に護衛は付いていないようでした…」

何かおかしい。
スカーが捕まっていないのだから、国家錬金術師に護衛は必ず必要となっている。
ヒューズもの事を心配していた筈なのに、
護衛を一旦付けておきながら再び外すのは不自然だ。

「そう、か。情報をありがとう…それと、この状況は君の所為ではない」
「ですがっ…」
「ヒューズが任を解いたのは、君の腕を信じていなかったからではない。
 あいつが君の腕を信じて彼女の護衛を命じたのは確かだよ。それは保証する。
 解いたのはきっと何か別の理由があったからさ…気にするな」
「マスタング大佐……ありがとうございます」

フェリクス少尉は一礼してからここを後にした。
足音が遠ざかるのを聞きながら、私は手元の写真に目をやった。

「…酷いな」
「こんなになるまでは…」

ヒューズの現場から数十メートル離れた場所では見つかったと聞いた。
写っている塀にはかなりの血がこびり付いて、下に擦れるように伸びている。
腕、足、脇腹、沢山の傷から流れ出した血が塀に追い詰められた時に付着し、
そしてが寄り掛かったまま倒れる際に擦れたという事だろう。

「! …円?」
「赤…血で描かれているようですね」

塀の真ん中より少し下あたりにそれを見つけた。
自分が構築式のような物だと言っていたなのに、
ここでは自らの血でわざわざ円を描いて錬成を行ったという事になる。

つまりは…ネックレスが使えず、手も合わせられない状態だったのか?
そして、チョークを持ち歩く程に慎重で念入り。

ヒューズの死。
ヒューズの現場から数十メートル。

セントラルへの出張。
















「セントラルから帰ってくるまでに、やる事やって、ちゃんと気持ちの整理してくるから」
















「! 中尉。は出張の前に、自分の仕事を粗方終わらせて行ったんだな?」
「…はい。確かに3〜4日先の分まで終わらせてくれていました」

東部を発つ前の自然で且つ不自然な行動。



それじゃあ―――…君はまさか!











パリッ










ハッとして音の方を見ると、さっき叩き付けた手帳の隙間から、
通常の稲妻のような錬成反応が漏れ出していた。
先程とは比べ物にならない程の強い反応に、ゆっくりと慎重に手帳を開く。



私がそのページを開いた瞬間、一際大きな音を立てたのを最後に錬成反応は静かにひいていった。
そこに描かれていた筈の錬成陣を跡形も残さずに。













私がゆっくりと視線を向けたその先で、






の瞼がゆるやかに開いていった。














 

新しいパソ子での初更新。
ちゃんと動くパソコンって幸せだ…