大丈夫。

怖がらないで。

あなたには導いてくれる人が沢山居ることを知ってほしい。

















は静かにドアを閉め、ドアに軽く寄り掛かった。
向かい合わせになった廊下の窓から外を見れば、降り続く雨が窓を濡らして音を立てている。
ついこの間まで恐れていた雨が、今は嘘の様になんともない。

また話せるかな…

叶う事はないであろうその小さな願いは、雨の音に紛れて消えていった。





?」
「あ、リザさん」

向こうから歩いてきたリザは、腕に書類の束を数冊抱えていた。
それらの行き先は勿論ロイの机の上。

「大佐の机にあった物はどうだったかしら?」
「あー…全然手が付けられてないというか…」
「やっぱり…期待はしていなかったけれど」

溜息を吐いたリザは、書類の束を一旦に渡すと、両手で勢いよく執務室のドアを開いた。

ドンッ
「っ!?」
ドンッ
ドンッ
ドンッ

轟音が鳴りやむと、部屋の主が机の陰からゆっくりと顔を覗かせる。
突然お見舞いされた鉛弾のオマケとしてか、舞った数枚の書類がロイに降ってきた。

「中尉…私を殺す気かね」
「大佐には死ぬ程仕事をして頂かないと」

リザはホルスターに愛銃をしまうと、
から書類を受け取り、既に山になっている書類達の上にばさりと置いた。
はその後ろ姿をじっと見つめる。

「リザさん…」
「何かしら?」
「やっぱり銃は使いこなせた方が良いんですか?」

の視線の先には、ホルスターに仕舞われているリザの銃。
ロイとリザが顔を見合わせた。

「そう、だな。護身の為にも扱える様にはなっていた方が…」
は今まで銃を持った事はあるのかしら?」
「な、無いです!日本で一般人が銃を持つ事は禁止されてて…
 本物を生で見るのはこっちに来てからが初めてなんです…」

ロイが顎に軽く手を持って行き、少し考える様な仕草をした。
ロイがリザの方へ視線を向けた。

「中尉、に銃の扱いを教えてやってくれ」














左右を白い板で区切られたスペースが何重にも連なりながら、奥へと続いていた。
そのスペースの至る所から発砲音が聞こえてくる。

「おおリザちゃん。今日も練習かい?」
「いいえ、今日はこの子の指導よ」

リザはそう言いながらへ視線を向ける。
首から双眼鏡をかけている優しげな表情をした男がリザの目線を追った。

、この人はここの責任者のエリックよ」
「初めまして。です」
「ああ、今日付で配属になったっていう、少佐で大佐のコイビトっていう…」
「よ、宜しくお願いします…」
「こちらこそ宜しくお願いします。少佐」

エリックはにこりと笑って敬礼をし、それに倣っても敬礼を返した。

リザは訓練場の奥から1丁の拳銃を持ってきての手へ静かに載せる。
ずしりと見た目以上の重さがの手にのし掛かった。
銃の重みだけではない、まるで何か別の物の重さも加わっている様だった。










自分の心がこの重さに耐えられるのかどうか。
この重さで自分の心が壊れるのではないか。
押し寄せる不安は瞬く間にの心に広がった。









「落ち着いて、。銃は…ただ人を殺めるだけの物では無い事をわかってほしい」









 それは大切な人を守り通すために使うもの


 守るためには消して迷わず






 引鉄を引くのよ











 

エリックさん…名前がわからないので勝手に命名してしまいました。
名前を考えるのにとてつもない労力を使った気が…;

2006/12/30 日本での銃の所持についての誤りを修正しました。
間違えた記述をしてしまい申し訳ありません。
指摘して下さった方、本当にありがとうございます。